脳のはなし

体力向上するだけで認知症リスクが33%減

心肺フィットネスレベルが高く体力のある人は、認知症リスクが低下するということを、ワシントンDC VA医療センターのEdward Zamrini氏らの研究グループが2022年にアメリカの神経学会の年次総会で発表しました。

この研究は、平均年齢 61 歳の退役軍人健康管理データベースに登録されている 64万9,605 人の退役軍人を対象に、約9年間追跡調査したもの。参加者には、心肺フィットネスのテストを受けてもらい、フィットネスレベルの高いグループから低いグループの5つに分けて体力を測定し、認知症発症との関連を調べました。心肺フィットネスとは、酸素を筋肉にどれだけうまく運び、運動中に筋肉がどれだけ酸素を吸収できるかを測定したものです。

その結果、心肺フィットネスレベルが最も高いグループは、最も低いグループに比べて、アルツハイマー型認知症を発症する割合が、33%も低いことがわかりました。さらにアルツハイマー型認知症の発症の割合を比較すると、最も低いグループに比べ、2番目に高いグループでも26%、3番目に高いグループでも20%低いことが明らかになりました。

アルツハイマー病型認知症を予防し進行を止める確実な方法はまだありません。けれどもこれらの結果から研究グループは、フィットネスレベルがそれほど高くない中間の人でも、運動や身体活動により体力を高めるだけで、認知症のリスクを低下させる可能性があるということがわかり、今後の研究の大きな希望になるのと述べています。

2020年「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(スポーツ庁)によると、全世代で運動不足を感じる人の割合は「大いに感じる」「ある程度感じる」を合わせると79.6%、30~50代は80%を超えると報告されています。

認知症発症のリスクを低下させるためにも、ウォーキングやストレッチなど、運動習慣をつけて体力向上を心がけることが大切です。

参考)アメリカ神経学会(ワシントンDC VA医療センター)(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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